【第8講座】【スポットコラム】営業活動に必要な仮説立案とは


2013年08月28日 (水)

去る8月22日にマーケティング研究協会様主催の公開セミナー『提案機会を生み出す仮説立案と情報収集』にて登壇いたしました。マーケティング研究協会様での公開セミナーは今年の春に引き続き今回で2回目となります。その他、企業研修などの仕事を講師として承ることもあり、ご一緒させていただくことの多いありがたいクライアント様です。

今回は、通常お話することの多いB2B領域での営業戦略論をもう2段階ほど絞込み、営業・提案という仕事に特化して、あるべき仮説立案⇒実行⇒検証のプロセスについての講義としました。大企業の営業部長・営業企画担当・中小企業の経営者などが聴衆として集まってくださり、アンケートの満足度も高く、終了時の懇親会出席率が9割と非常に高い評価を頂けたのは講師として喜ばしい限りです。少しですが、エッセンスみたいなものをコラムに書き加えて見ましたので、ご興味があれば以下をお読み下されば幸いです。

【以下コラム本文】———–

さて、営業に必要な仮説立案とは、どのような概念なのかについてこの場で簡単に記したい。早稲田大学のMBAの教授である元ボスコンの内田和成先生が、コンサルタントの仮説立案について書かれている「仮説思考」という書籍がつとに有名であり、その他新規事業開発や新製品開発などに言及したいわゆる仮説本は世に多くある。

私も仮説に対して講義をする身であるので、ひと通り仮説と名の付く書籍には目を通している。そこで思うことは、人の営みはほとんど仮説検証で回っているということだ。特に未来について何かを行う場合にはほぼ100%仮説を立てて行動していると言える。従って改めて仮説立案云々を論じるというのはある意味アタリマエのことを整理してお伝えしているということに他ならない。

よく言われる仮説の定義をここで記しておこう。
「仮説とは『現時点で最も実現性の高い説』のこと」である。ものすごく簡単に言うと「~なんじゃないかなぁ」と考える事だ。単なる予想や妄想と少し違うのは、現時点で最も高い実現性が求められる点と言える。
とは言っても、事例で語るとそれほど難しいことではない。

例えば、母親が夕食の支度をする場合に、「子供がハンバーグを食べたいのではないかなぁ」と考える。何故なら昨日のちびまる子ちゃんのテレビの中でハンバーグが出てきた際に「ハンバーグ食べたいね」と言っていたから。
これで十分に仮説立案である。そして、ハンバーグを作って「ハンバーグ食べたかったんだよね」と喜んで食べてくれるのが実行と検証の部分であり、当該仮説は当たっていたということになる。

また、模擬試験の成績が悪かった予備校生が、「参考書中心の勉強のやり方が間違っているのではないだろうか?」と仮説を立て「合格者の勉強法として成功例が最も多い、過去問を解きまくるという勉強方法に変更する」のも仮説立案の事例だと言えるだろう。仮説の正当性の証明は、希望校に合格するその日に行われるのである。落ちた時に仮説検証が終了するというのは中々皮肉なものではあるのだが。
これらの事例が示す通り、不確実な未来への行動に際しては皆少なからず仮説を立案し、実行検証を行うと言う行動を取っていると言える。

それでは、企業の営業活動における仮説立案とはどういったものだろうか。それは、未確定・不確実な2つの要素、未来の数字と顧客のニーズについてである。いずれも、現時点ではわからない要素である。これら2つについて、如何に仮説を立てて攻略していくのかを考えるのが営業活動上の仮説検証のプロセスなのである。

仮説立案に対して、忘れてはいけない考え方があるので紹介しておこう。それは、人は知らないことへは仮説が立てられないということだ。言葉やフレームさえ知っていれば、詳細はネットで調べればだいたいの情報は入手できる。ネットに落ちていない情報でも、国会図書館や日経テレコンなどで調べればほとんどの情報は入手できるといって良いだろう。そこから、最も確からしい仮説をたてることは時間をかければなんとか作りうる。

しかし、残念ながら全く知らないことに対してはろくな仮説が立たない。上記のハンバーグの例で言うと、子供が食べたいものというテーマに対してはなんとなくパターンの数は限られている。もしかしたら寿司かも知れないし、焼き肉かも知れない。まぁ選択肢はたかが知れているだろう。だが、例えばインドネシアの首相が今晩食べたいものは何か?という問いに対して立てられる仮説は、「インドネシア料理かなぁ?」くらいの矮小な仮説しか立たないのである。
確かに現時点の私であれば、その程度が精一杯の「現時点で最も可能性の高い説」であると言うしかないだろう。しかし、仮説として成り立っているかというと甚だ心もとない。根拠がインドネシア人だからという程度だからだ。圧倒的な情報量の不足が仮説を狭小なものにしているのである。

ここで私が言いたいことは、仮説を立てるには、その仮説となる元の情報を幅広く知らなければ立て様がないわけだから、常に情報に対して貪欲でいなければならないということである。特に自らのビジネス領域のことについて、知らないことを無くそうと言うくらいの心意気は必要だ。
営業企画や営業戦略、実際の現場の営業マンは、例えば顧客についてはとことんまで知らなければならない。例えば顧客のビジネスの成績表である財務諸表を読めずして、良い仮説は立たないと断言する。財務諸表には、その企業に対して立てられる仮説の素が数多く詰まっている。いわばその会社の履歴書・経歴書のようなものだ。履歴書・経歴書無しで採用面談を行うのが具の骨頂であるように、財務諸表を見ずして訪問を行うことはありえないと言って良いと考えて間違いなかろう。

知らないことに対してはまともな仮説は立てようがないのだから。

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